前ページ


3、木の性質

(1)木は生き物

 当然の事ながら木は生き物です。伐採され材木となると、生物学的には死の状態ではありますが木材として扱う側としてはまだ生きています。当然ギターという形になっても生きています。木というものは水分の影響を受けやすく、湿度に過敏に反応します。一度水分により影響を受けて変化したものは元の状態には戻らないと言っても過言ではありません。分かり易い例をあげますと、紙に水を一滴たらします(水分の影響)、しばらくすると水は乾いてなくなり水分のなくなった紙にはしわ(変化)が残ります。このしわ(変化)はもう元の平らな状態にはなりません。原材料である木材にも同じことが言えます、木は水分を含むと膨らもうとし逆に乾燥すると縮もうとします。ギターは塗装を施し外気と遮断して水分から守っていますが、アコースティックギターなどはボディーの外側は塗装を吹いていますが内側は木がむき出しの状態なのでもろに影響を受けてしまいます。また指板も一部を除きむき出しの状態のため水分の影響を受けやすい部分です。もう一つ受ける影響に熱があります、熱された面は乾燥し縮んでしまいます。酷いものはひび割れてしまいます。木材を乾燥させるには知識と経験が必要となり、素人がやると殆どひび割れて使い物にならなくなります。

(2)木に含まれる水分

 樹木に含まれる水分には2種類あります。細胞と細胞の間や導管の中にある自由水分と、細胞の中にある結合水分です。自由水分は木の中に出入りが自由で細胞には変化をもたらさないため木材の性質自体には影響がありません。細胞の中にある結合水分は増減すると著しく細胞に変化を与え、木材の性質を変化させてしまいます。結合水分が減ると木材は硬くなり増えると柔らかくなります。例えると、生の鰹の身は柔らかいですが乾燥した鰹節はとても硬くなるのと一緒です。この結合水分が1%増減すると木の強度の変化は圧縮強さが4〜6%、引張り強さが3%、曲げ強さが4〜6%、せん断強さが4%変化するといわれています。
 水分が材の重量に対してどの位含まれているかを表した物を、含水率といいます。伐採された直後の樹木には自由水分と結合水分の両方が存在し含水率は40〜200%あります。その後伐採された樹木は大気中にさらす自然乾燥を行います。自然乾燥を行うと自由水分は殆どなくなり結合水分だけになります、この状態を繊維飽和点といいこのときの含水率はどんな木でもほぼ一定で30%になります。そこからさらに含水率を下げ15%位に下げたものが日本の基準含水率になり、建材や家具などに使われるには問題ない状態になります。ホームセンターなどで売られている木材も15%です。楽器に使用される木材はさらに7%前後まで下げます、中には一度0%近くまで下げてから7%前後に戻して使う業者もいます。楽器に使用されている木材はエリート中のエリートと言ってもいいでしょう、7%という低含水率にする過程ほとんどがひび割れたり反ったりして脱落していく中、生き残った立派な木なのですから。二束三文の物とは分けが違います。

4、楽器屋は業者泣かせ

 これは余談ですが、楽器業界は材木業界泣かせと言われています。材木業界の中での楽器業界の割合はほんの数%に過ぎないのに、材の木目や木取りには物凄く細かい注文をつける上に含水率は基準以下、割れやすく取り扱いが難しい材や入手が困難な材を求めるなど他の業界に比べ、外観や材質にいちばんうるさく消費量が全体の数%しかないからです。ごめんなさい材木屋さん・・・


最後に一言・・・

いかがでしたか?分かりにくい説明だったかもしれませんが、木材というものはこんなにも奥が深い物なのです。楽器になれる木は世界の木の中の1%にも満たないのです。なぜ楽器が高いのか分かっていただけましたか?皆さん、木の為にも楽器を大切にしてあげてください。それでは・・・
長々と読んでいただきありがとうございます。
戻る