1、樹木について
樹木には大きく分けて針葉樹と広葉樹の2種類に分けられます。針葉樹はその名のとうり針のように尖った葉をしていますが、イチョウのように葉が広い針葉樹も存在します。比較的寒い地域に自生し落葉することなく1年中葉を茂らせています。柔らかい材質のものが多く、音の反響性に富んでいます。
続いて広葉樹、これもその名のとうり広くてうすい葉をしています。比較的暖かい地域に自生し、紅葉や落葉をします。
材質は、硬くしっかりとしたものが多いようです。
ソリッドギター(エレキギター)では殆どが広葉樹を使用し、針葉樹はアコースティックギターやクラシックギター、バイオリンなどで使用されています。
針葉樹 | 広葉樹 |
松(スプルース)、杉、檜、イチョウ、 イチイなど・・・ |
かきの木(エボニー)、マメ(ローズウッド)、楓(メイプル)、 センダン(マホガニー)、クルミなど・・・ |
2、木材の各部名称と特徴
木材は部位や切断のされ方により名称があります。
樹木の中心部分を心材外側を辺材といいます、一般的に辺材に比べ心材のほうが濃い色をしていて水分の含有率が高いです。ギターでは主に辺材を使用します。一番外側の皮を樹皮といいます。次に切断した際に年輪が輪状に見える面を木口(こぐち)、心材に向かって垂直に切った木目が真直ぐな面を柾目面。心材から外れて切断した木目が湾曲していたり楕円状に見える面を板目面といいます。柾目と板目材の両端を木端(こば)といいます。板目材には裏と表があり、心材側の面を木裏、辺材側を木表といいます。柾目材には裏表はありません。 丸太から材木として切り出すさい柾目で切り出すより、板目で切り出すほうが材料として多く取り出せ経済的ですが、板目は収縮が大きく、ねじれや反りなどの狂いが出やすく、扱いには注意が必要です。逆に柾目は切り出せる量は少なく経済的ではありませんが、木目が均一に真直ぐで反りにくく狂いが少なくなります。ネック材には柾目の方が向いているといえます、ギターを買う際にネック材の木目もポイントの一つにするといいです。板目のネック材の場合ポイントになるのが指板の接着してある面です。接着面が木裏面であると、長い年月が立ち材が乾燥してくると、指板とネック材の境から剥がれてくる可能性があります。板目のネック材のギターを買う際は木表面に指板が接着してあるのを選ぶとよいでしょう。逆にボディー材は特にこだわる必要はないと思います、ボディー材は分厚いため変化しにくいのです。そのため見た目で選んでも支障はないでしょう。 |
3、木の性質
(1)木は生き物
当然の事ながら木は生き物です。伐採され材木となると、生物学的には死の状態ではありますが木材として扱う側としてはまだ生きています。当然ギターという形になっても生きています。木というものは水分の影響を受けやすく、湿度に過敏に反応します。一度水分により影響を受けて変化したものは元の状態には戻らないと言っても過言ではありません。分かり易い例をあげますと、紙に水を一滴たらします(水分の影響)、しばらくすると水は乾いてなくなり水分のなくなった紙にはしわ(変化)が残ります。このしわ(変化)はもう元の平らな状態にはなりません。原材料である木材にも同じことが言えます、木は水分を含むと膨らもうとし逆に乾燥すると縮もうとします。ギターは塗装を施し外気と遮断して水分から守っていますが、アコースティックギターなどはボディーの外側は塗装を吹いていますが内側は木がむき出しの状態なのでもろに影響を受けてしまいます。また指板も一部を除きむき出しの状態のため水分の影響を受けやすい部分です。もう一つ受ける影響に熱があります、熱された面は乾燥し縮んでしまいます。酷いものはひび割れてしまいます。木材を乾燥させるには知識と経験が必要となり、素人がやると殆どひび割れて使い物にならなくなります。
(2)木に含まれる水分
樹木に含まれる水分には2種類あります。細胞と細胞の間や導管の中にある自由水分と、細胞の中にある結合水分です。自由水分は木の中に出入りが自由で細胞には変化をもたらさないため木材の性質自体には影響がありません。細胞の中にある結合水分は増減すると著しく細胞に変化を与え、木材の性質を変化させてしまいます。結合水分が減ると木材は硬くなり増えると柔らかくなります。例えると、生の鰹の身は柔らかいですが乾燥した鰹節はとても硬くなるのと一緒です。この結合水分が1%増減すると木の強度の変化は圧縮強さが4〜6%、引張り強さが3%、曲げ強さが4〜6%、せん断強さが4%変化するといわれています。
水分が材の重量に対してどの位含まれているかを表した物を、含水率といいます。伐採された直後の樹木には自由水分と結合水分の両方が存在し含水率は40〜200%あります。その後伐採された樹木は大気中にさらす自然乾燥を行います。自然乾燥を行うと自由水分は殆どなくなり結合水分だけになります、この状態を繊維飽和点といいこのときの含水率はどんな木でもほぼ一定で30%になります。そこからさらに含水率を下げ15%位に下げたものが日本の基準含水率になり、建材や家具などに使われるには問題ない状態になります。ホームセンターなどで売られている木材も15%です。楽器に使用される木材はさらに7%前後まで下げます、中には一度0%近くまで下げてから7%前後に戻して使う業者もいます。楽器に使用されている木材はエリート中のエリートと言ってもいいでしょう、7%という低含水率にする過程ほとんどがひび割れたり反ったりして脱落していく中、生き残った立派な木なのですから。二束三文の物とは分けが違います。
4、楽器屋は業者泣かせ
これは余談ですが、楽器業界は材木業界泣かせと言われています。材木業界の中での楽器業界の割合はほんの数%に過ぎないのに、材の木目や木取りには物凄く細かい注文をつける上に含水率は基準以下、割れやすく取り扱いが難しい材や入手が困難な材を求めるなど他の業界に比べ、外観や材質にいちばんうるさく消費量が全体の数%しかないからです。ごめんなさい材木屋さん・・・
最後に一言・・・
いかがでしたか?分かりにくい説明だったかもしれませんが、木材というものはこんなにも奥が深い物なのです。楽器になれる木は世界の木の中の1%にも満たないのです。なぜ楽器が高いのか分かっていただけましたか?皆さん、木の為にも楽器を大切にしてあげてください。それでは・・・
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